『若者の現実と夢』
「公論」に向けて、
よしりん師範に
登場してもらいます
2月13日に開催した
「第11回・ゴー宣道場」
『若者の現実と夢』 では、
実際に就活を行っている
大学生の現実の姿をまず、
若者以外の多くの世代に
見てもらいたいと思っていました。
40社、50社と就活を行い、
なりふりかまわず、コネも使い、
誰も知らないような
中小企業まで受けても
未だ採用されないという現実。
これが本当に
よく言われるような
「ミスマッチ」 だの
「自己責任」 だので
片づけられるものなのか?
と問いかけたわけです。
アンケートを見る限り、
道場生の多くがその意図を
よく汲み取ってくれたようです。
その意図を理解しないどころか、
真っ向から否定する
意見が出たのには驚きました。
そして特別に招いた
学生たちの発言という、
いわば今回の道場の
核心部分の直後に、
高森師範が行った
発言がそれです。
「この20年間、大学新卒者の就職者数は、
バブル期を下回ったことがない」
就職口のパイははるかに小さかった」
大学が増えすぎて、大学生の数が
1.6倍にもなっているからだ」
これは海老原嗣生著
『「若者はかわいそう」論のウソ』 (扶桑社新書)
を鵜呑みにした意見で、
要するに、
「若者はかわいそうではない、
行く必要もない人まで
大学に行っているだけだ」
というのです。
つまり 「自己責任論」 です。
せっかくわしが用意した
若者の実体験の話を、
全く無意味だと言ったのも同然で、
今回の「ゴー宣道場」の
テーマ設定自体を否定する
発言のように感じました。
特に苦汁を乗り越えて
人前で実体験を語ってくれた
新井さんに対し
失礼ではなかったでしょうか?
確かに「ゴー宣ネット道場」の動画でも
高森氏はこの海老原本を取り上げて
「日本経済低迷の根本原因」
としていたのですから、
動画撮影の時点で
本を読んでみるべきでした。
聞いた瞬間に
「そんな馬鹿な」と思い、
一笑に伏していたのが
わしのミスでした。
わしは即座に
こう疑念を抱きました。
それなら、6割増えた大学生が、
昔のように高卒で就職していたら、
現在の就職難は
出現していなかったのでしょうか?
そんなはずはありません。
「ゴー宣道場」から3日後、
高森氏がバイブルにしていた
海老原嗣生の新書を読みました。
通説をデータでひっくり返す
面白さはありますが、半信半疑。
変だと思う箇所はあちこちに散見され、
結論に至っては外国人労働者で
労働不足を解消しようとまで
書いてある始末で、
信用に足る本ではないと
思える内容でした。
そこでちょっと調べてみたら、
実に悪質な数字のトリックが
あることがすぐわかりました。
「学校基本調査」のデータに依れば、
大学新卒者の就職者数は、
バブル期は平均31.3万人。
大学新卒者の就職者数は、
バブル期を下回ったことはない。
むしろ微増している。
これは事実。
ただし、
大卒者のデータだけを見れば です。
ここに重大な「データ隠し」の
トリックがあります
高卒の就職者数は、
バブル期には 60万人超 。
大卒者の倍 に上っていました。
今年度の高卒就職者数は、
たった 16万9千人 です
高卒就職者数は
バブル崩壊以降急落を続け、
1998年に大卒就職者数を下回り、
今や高卒の就職者は、
大卒就職者の半分。
20年間で4分の1にまで減り、
なおも減り続けています。
同様に、
中卒者は 約6万人 から 5千人 に、
短大卒が 約16万人 から 4万6千人 に
激減しています。
確かに大卒者だけ見れば、
就職者は20年前より
数千人増えています。
ところが、
中・高・短大卒を合せて見れば、
若者の就職口は20年前より
約58万人も減っているのです
バブル期よりも現在の方が
就職口のパイが大きいどころか、
実際は半分まで小さくなっている
これは少子化による減少を
はるかに上回る規模です。
ついでに言えば、
大学院卒の就職者数は、
バブル期に 約2万人 だったものが、
今年度は 6.2万人 と
大幅に増えています。
もうおわかりですね。
大卒の就職者数が微増したのは、
以前なら高卒で採用していたような職種でも
大卒者しか採らなくなったからです。
大学が新設され、
大学生が1.6倍に増えたのも、
大卒でないと就職できないという状況が
出来上がってしまったからに他なりません。
文科省に責任転嫁するような
話ではないのです。
若者の就職口のパイは
半分まで小さくなっています。
これがいかに過酷な状況か。
これを
「ミスマッチ」だの
「自己責任」だので
済ませていい問題なのか。
もう言うまでもないことでしょう。
さらにこれはデータを
取ってないからわしの推察ですが、
バブル期より若干増えたように見える
大学新卒者の就職者が、
以前のようにホワイトカラー中心
ということもないでしょう。
大卒者のイメージとは
おそらく全く違っていることも
考えられます。
ホワイトカラーへの就職口が
かなり狭まっている証として、
新井さんのような
若者の出現があるのです。
『「若者はかわいそう論」のウソ』は、
世に広がっている
「若者はかわいそう」論の
根拠とされている数字のウソを
「データで暴く」と謳った本です。
その著者がこんなに簡単な
データの読み違えを、
まさかミスでやるとは思えません。
多分、確信犯のトリックでしょう。
可哀そうな若者など存在しない。
日本経済低迷の「根本原因」は
文科省が大学を増やしすぎたことにある?
なんでこんな馬鹿馬鹿しい結論が
出るのでしょう?
「実感」 をくつがえすほどのものですかね?
「確実に若者が就職難になって、
あぶれてしまってるな」という
「実感」は、リストラだらけ、
デフレ不況、企業の海外移転、
国内空洞化の現状を見ていれば、
そう簡単に揺らぐようなものでは
ないと思うのですが?
今年のサラリーマン川柳には
「何になる? 子供の答えは 正社員」
というのがあったそうです。
子供でも「実感」する将来不安が、
たかが怪しいデータひとつで
拭えるものでしょうか?
その「実感」がありさえすれば、
妙なデータが出てきたときに、
「変だな?そうは感じないが?」
と疑念を抱くのが
自然なのではないですか?
一気に消滅させてしまうのは
むしろ左翼の心性なのでは
ないでしょうか?
カルトに嵌る信者も
「実感」を一気に忘却します。
保守は 「実感」 をそう簡単に
手放してはいけないと思います。
事前の打ち合わせの段階で、
もっと議論しておく必要を
今回痛切に感じました。
それは道場終了後の打ち上げのとき、
一か月前でなければ間に合いません。
テーマ設定に関わる
根本的な認識で
意見が食い違ったまま
終わるのでは、
公論にならないからです。